ペインクリニック学会報告書
                         
1.学会内容
 テーマは「安全・確実な痛みの進歩を目指して」。ペインクリニシャンが行う痛みの治療手段として、薬物療法・神経ブロック方法・手術療法がある。その中で、がん性疼痛に関わる治療について薬剤・ブロックなどの最新の情報や、新たなエビデンス緩和医療の今後などを学習することが出来た為、報告する。

1) 緩和ケアに用いられる薬剤の基本的な使い方
 がんで2人に1人はがんに罹患し、その内の3人に1人はがんで死亡する時代。しかし、疼痛コントロールや麻薬の消費量は日本ではまだまだ低い。その為、もう一度WHO徐痛ラダーを学習しそれぞれの薬剤の特徴と、身体での機序を学んだ、そのなかで興味深かったことをあげる。
① NSAIDsの副作用
高齢者は動脈硬化がベースにある為、PGE2が働きを強化し腎動脈の血流量を保持している。その為、NSAIDsの長期投与で腎障害を起こしやすい。その為、CX−2選択阻害薬の使用が望ましい。心血管障害の副作用の報告もあるが、あまり問題ないと考える。現在、メサドンの治験が行われており、発売も間近である。
セレコキシブは発売されたが、がん性疼痛への使用は適応外となっている。
オピオイドとNSAIDsの併用の意義
PGE2を抑えることによって、疼痛は緩和される。その為、オピオイドの量も最小限の量で使用できる。それは、末梢でおこる痛みの悪循環を断ち切ることであるため、オピオイドを単剤投与するのではなくて、併用することである。
オピオイドの定期投薬
MSコンチンは12時間作用が難しく、3回/dayの投与でもいい。患者の痛みの流れに沿って必要な投与間隔を行う。が、オキシコンチンを同じように使用する必要はない。また、デュロテップパッチに関しては10mg〜15mg程度で天井効果が起こるのではないかと臨床の場では言われ始めている。
④ 骨転移に対するビスホスネート(ゾメタ)の効果
骨転移を起こす腫瘍はPGE2を分泌し、破骨細胞を活性化させ骨吸収を促し、骨吸収が進んだ所に腫瘍が入り込み増殖を行う。ゾメタはこの破骨細胞を排除し、骨吸収した組織へ吸着する。その為、骨吸収は抑制され疼痛の緩和・腫瘍の増殖を抑える。また、4週毎に使っていくことで、新たな骨転移巣を予防することもできる。

2) オピオイド鎮痛の展望―レセプター動態から考えるー
緩和医療では多剤併用を行い疼痛コントロールを行う。まだまだ、医師の理解が少なく「何が効いているのかわからない」という意見もある。今回、オピオイドのレセプ
ター動態から、多剤併用を行う事で何が起こっているのか、エビデンス・研究に基づき多剤併用の有用性を学習した。
① 優れたオピオイド鎮痛とは
・ 鎮痛効果が強い
・ 副作用が少ない
オピオイドによる過敏化がない
・ 耐性形成がない
② 脊髄後角での動態
今までは、力価や親和性で考えてこられたが、細胞内の動きを知ることで各薬剤と併用時の効果を知る。モルヒネ単剤投与で過量投与を行うとパラドキシカルペインの発生が起こる実験結果がある。それは耐性形成とC-fos(脊髄後角で痛み刺激を受け入れると分泌される物質)が関連し、モルヒネを投与し続けるとC―fosは増加する為である。ここに、ケタミンなどの補助薬を併用するとC―fosの出現は抑えられ耐性形成が抑制される。よって、補助薬との併用は耐性形成を抑える事に有用である事が言える。
③ μ受容体での動態
脊髄後角のμ受容体細胞でのインターナルゼーションで、鎮痛効果を高めると考えられている。モルヒネはこれが起こらないが、鎮痛効果はある。またフェンタニルはインターナルゼーションが起こりやすい。この2剤を併用することによって、オピオイドの受容体動態は変化する。2剤のオピオイドの併用は単剤より相乗作用を起こし、鎮痛効果を長く強く維持することが出来る。
 つまり、疼痛コントロールにおいて、多剤併用を行うことは、耐性を抑制し鎮痛効果を高める。

3) がん対策基本法緩和医療―がん疼痛治療と緩和チームへのインパクトー
 緩和医療とは−辛くなくがんと付き合える事を支える事である−
治療早期から緩和ケアは必要で、治療と同時に辛さや症状の緩和の治療を行う。そして、今後は病院―ホスピス−在宅ケアが1つとなって進めて行くことが必要である。
 緩和ケアチーム構成
 医師(症状緩和)    1名
 医師・心理療法士(精神)1名
 看護師         1名
 薬剤師         1名          
    その他、SW・理学療法士などさまざまな職種  
30名を1年診ると1400万の収入となる

今後の重点課題:10年以内にがん治療に携わる全医師が緩和ケアの基本知識を習得する
必要なのは、患者の苦痛緩和を病院の目標にすること。
緩和ケアチームの活動を業務として管理者が認識すること。

改正になった麻薬管理
・ 麻薬の定数配置が出来る
・ 入院患者に最小限の麻薬を保管させることが出来る
入院患者が交付された麻薬を不注意で紛失しても自己届けを提出する必要はない

4) その他
 最近の話題は、海外で神経因性疼痛に対する適応を受けているギャバペンチン(抗けいれん薬)が日本で発売され、多数の症例発表があった。しかし。副作用は(ふらつき25%・眠気56%・失見当13%・倦怠感6%)と強い。


簡単に報告書なる物(ほんの一部)を書いて提出した。これで、出張費がもらえるならありがたい・・・。
基本的な事(ラダーの話し)複雑難解な事まで。いや〜〜楽しい学会だったっす!
しかし、もう少し細かく憶えてきたのだけれど・・・・、意味不明と思われるほどヲタクな話しばかり♪なので簡単に書かせていただきました。間違って書いていれば許してやってください。
私はとっても楽しかった♪

10月に緩和医療薬学会がまた関東方面で行われます♪
参加しよ〜〜〜っと。